こども誰でも通園制度とは?令和8年度本格実施で保育施設が押さえておきたいこと

政策解説 保育

「こども誰でも通園制度」は、保護者の就労状況にかかわらず、生後6か月〜満3歳未満のすべての子どもを保育施設に預けられる新しい仕組みです。令和8年度から給付対象事業として本格運用が始まり、各施設では受け入れ体制の整備が求められています。

この記事では、制度の基本的な仕組みや一時預かりとの違い、実施方式の選び方を整理したうえで、モデル事業に参加した保育施設のリアルな声から見えた課題と具体的な対応策をご紹介します。

こども誰でも通園制度とは|制度の目的と3つのねらい

従来の制度では、保護者が働いているかどうかが保育施設の利用の基準となっていました。しかし「こども誰でも通園制度」では、このような就労状況や理由を問わず、専業主婦(夫)家庭や、育児休業中の家庭など、誰でも子どもを保育施設に預けることができるようになります。

制度の目的

制度の目的は大きく3点です。

子どもの育ちを支える
家庭以外の集団環境で、子どもの社会性や発達を促す機会を提供する

保護者のサポート
育児の孤立感や負担を軽減し、育休中の親も利用できることで「孤育て」を防ぐ

地域での育ちを支える環境づくり
地域社会が子育てに関わる接点を増やし、少子化対策にも貢献する

少子化や子育て家庭の孤立が進む中で、この制度には「家庭だけでがんばりすぎない子育て」を支える役割が期待されています。

対象と利用条件|生後6か月〜満3歳未満の未就園児

対象は生後6か月から満3歳未満で、保育所・幼稚園などに通っていない子どもです。利用時間は月上限10時間、利用料は1時間あたり300円程度を国が標準として示していますが、実際の設定は自治体や施設によって異なります。

一時預かりとの違い|「保育」ではなく「育ちの支援」が主目的

一見すると「一時預かり」と似た制度ですが、実施目的と仕組みに大きな違いがあります。制度の主目的が「育ちの支援」にある点が一時預かりとの最大の違いです。

継続的に利用する前提での支援体制が求められるため、受け入れや記録対応の方法にも違いが出てきます。

実施方式の選び方|「一般型」と「余裕活用型」の違い

こども誰でも通園制度では、保育施設の状況に応じて「一般型」と「余裕活用型」という2つの実施方法が用意されています。

一般型

制度専用の枠を設け、独自に職員配置を行う方式。保育士割合50%以上が必要です。独立した受け入れ枠を確保したい施設に向いています。

余裕活用型

認可保育所や認定こども園など既存施設の通常の人員配置基準を活用する方式。新たに職員を増員せず、現在の体制の範囲内で対応できるため、まずは制度を試してみたい施設や、人員に余裕がない施設にとって現実的な選択肢です。

なお、障がいがある子どもや医療的ケアが必要な子どもを受け入れたり専用の保育室を設ける場合は、追加の体制整備が必要になることがあります。

試行的事業(モデル事業)から見えた3つの課題と、現場の対応策

「こども誰でも通園制度」の施行的事業に参加した保育施設からは、制度への期待とともに、実務面の不安も数多く報告されています。

以下は、こども家庭庁「こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業の実施に関する調査研究報告書」(令和7年3月)をもとに、優先度の高い3つの課題と、現場で実践された対応例を整理します。

課題1. 保育者の確保

制度では専任従事者の配置や保育士比率の要件があるため、通常業務に加えた人員確保の難しさが現場で課題となりました。施行的事業(モデル事業)に参加した自治体の81.6%が「保育者の確保」を課題として挙げています。

【保育者確保における現場での対応例】

「余裕活用型」を選択し、通常の職員配置基準内で対応

登園が集中しやすい曜日・時間帯を見越したパート職員のシフト調整

〇 制度導入の方針と役割分担を職員間で事前にすり合わせ

登降園の曜日・時間帯が固定されない制度の特性上、柔軟なシフト設計が鍵になります。

課題2. 保護者とのコミュニケーション

登園頻度が少ないぶん、子どもの様子を伝える機会が限られるという難しさもあります。制度利用者の多くが「子どもの様子を詳しく知りたい」と希望しており、保育者の約7割が保護者対応の時間・労力が増えたと回答しています。

【保護者とのコミュニケーションにおける現場での対応例】

〇「今日の様子」を簡潔にまとめたひとことコメントの送付を習慣化

〇保育中の活動を記録した写真や共有カードで家庭とのつながりを強化

〇利用前に制度の目的や利用イメージを丁寧に説明し、保護者の期待値を調整

短時間・不定期の利用でも「安心感・信頼感」を伝えられる仕組みを整えることが、保護者満足にもつながります。

課題3. 記録・請求処理・連絡業務の煩雑化

試行的事業(モデル事業)に参加した複数園で、保育者の約半数が、記録作成・請求処理・連絡手段の煩雑さが現場負担につながっているという声が寄せられました。特に、運営費や人員に十分な余裕がない園では、保育者の事務作業の負担が大きくなる傾向が見られました。

【記録・請求・連絡業務における現場での対応例】

〇子どもの様子・成長・次回につなげたいことなどを専用フォームで定型化し、記録にかかる時間を短縮

〇担当を1人に集中させず、事前面接・記録・利用調整をチームで分担する体制を整備

ICTツールを活用し、利用状況や子どもの記録を職員間でリアルタイム共有

通常保育に加えてこども誰でも通園制度特有の業務も発生するため、記録・事務の仕組みをいかに整えるかが現場の負担を左右します。

よくある質問(FAQ)

こども誰でも通園制度の本格実施にあたり、よくある質問をご紹介します。

Q. こども誰でも通園制度は、どの施設でも参加できますか?

A. 制度上は、特定の施設類型に限定せず、さまざまな施設が関われるようにする考え方のもと、基準を満たす施設であれば実施可能とされています。実際の運用にあたっては、自治体が事業者の募集や認可を行い、実施施設や実施方法を定めています。

Q. 通常保育の職員をこども誰でも通園制度に兼任させることはできますか?

A. 条件付きで可能です。同じ時間帯に両方を掛け持ちすることはできません。ただし、両事業の職員配置基準をそれぞれ満たしたうえで、実施時間帯が重ならない場合は兼任が認められています。人員に限りのある施設では、シフト設計の段階でこの条件を考慮しておくことが重要です。

Q. 「こども誰でも通園制度総合支援システム」とは何ですか?施設側はどのような対応が必要ですか?

A.こども家庭庁が提供する専用システムで、施設・保護者・自治体がそれぞれ活用します。施設側では、空き枠・面談可能枠の登録、予約の確認・管理、QRコードによる登降園の打刻、利用実績の入力、自治体への請求書発行といった業務をこのシステムを通じて行うことになります。システムの運用ルールや手続きの詳細は自治体によって異なる場合があるため、担当窓口に早めに確認しておくとよいでしょう。

Q. ICTツールを使っていない施設でも対応できますか?

A. 運用自体は可能ですが、記録・請求・保護者連絡の煩雑化が試行的事業(モデル事業)でも課題となっていました。ICTを活用することは、運用の負担軽減や体制整備につながります。

まとめ|制度実施に向けて押さえておきたい3つのこと

「こども誰でも通園制度」は、すべての子どもに育ちの機会を届けるという保育政策の大きな転換点です。
本格運用が始まった今、これから参加を検討・準備する施設は、以下の3点を軸にすると安心です。

  1. 参加判断と実施方式の決定(一般型 or 余裕活用型)
  2. 職員体制・シフト設計の見直し
  3. 自治体システムやICTツールの整備と運用フローの整理

特に記録・請求・保護者連絡にかかる業務負担は、仕組みを整えるかどうかで大きく変わります。本格運用ではこども家庭庁が整備した「こども誰でも通園制度総合支援システム」への施設登録や空き枠の設定、利用実績の入力といった対応も求められるため、操作フローや担当者をあらかじめ確認・整理しておくとよいでしょう。試行的事業(モデル事業)に参加した施設の知見を参考に、体制づくりを進めましょう。

参考:
こども家庭庁┃こども誰でも通園制度の実施に関する手引
こども家庭庁┃「こども誰でも通園制度」について~基礎資料集~
こども家庭庁┃令和7年度 こども誰でも通園制度に関する Q&A 【第20版】
こども家庭庁┃こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業の実施に関する調査研究報告書(令和7年3月)

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